薬用人参と言えばまずは、朝鮮ニンジンが思いつくであろう。ところが人参には、朝鮮人参をはじめとし、一般に他にも竹節人参、西洋人参、田七人参、シベリア人参が有名である。また三葉人参、二セ人参、ショウガ人参、トチバ人参などと呼ばれる種類がある。

現在、以下のようないろいろな漢方処方に中に配合されている。

  • 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
  • 桂枝人参湯(けいしにんじんとう)
  • 化食養脾湯(かしょくようひとう)
  • 甘草瀉心湯(かんぞうしゃしんとう)
  • 黄連湯(おうれんとう)
  • 人参養栄湯(にんじんようえいとう)
  • 釣藤散(ちょうとうさん)
  • 白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)
  • 半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)
  • 瓊玉膏
  • 人参湯
  • 独人湯
  • 参苓白朮散
  • 補気建中湯

 等々多くの処方が挙げらける。

もともと人参は数千年前から人の各種疾病の治療や予防に広く使われてきた。栽培ができるまでは野生のものしかなく、日本では大変高価なものであった。

朝鮮の伝統的な薬剤であることは言うまでもないが、根の形が人の形に似ているということで人参と呼ばれている。朝鮮でも、容易に見つかるものではなく、深い森の中に自生し、人の目を避けるように人参自体が移動してしまうのではないかという逸話さえ残されている。また、親孝行者にしか見つけだすことができない、あるいは正直者の目にだけとまるという伝説が言い伝えられてきた。

中国の古書である「本草経集注」(502~536)に掲載され、日本へ伝えられたのは森羅の使節である己珍蒙(キシンモン)が訪日の際に人参30斤を贈答品とし、739年に持ち込まれたと言われている。(つづく)

『漢方の相談室』一覧へもどる次へ

※これらの『おくすり相談事例』は薬剤師・鍼灸師の福島勇二先生が湘南朝日に連載したコラム『漢方の相談室』より転載したダイジェスト版です。