〜薬剤師 美濃口 豊〜

乳幼児に多い「RSウイルス(respiratory syncytial virus):RSV感染症」の患者が、冬から秋に流行していますが、平成24年度は夏場から急激に増え、秋に急増しました。

RSウイルスの特徴

原因となるRSウイルスは、とても感染力が強く、2歳までにほぼすべての乳幼児がRSウイルス感染症に罹ります。
  鼻水と咳で風邪に似た症状が2〜3日続いた後、ゼーゼーという呼吸になったり、哺乳力が落ちたりします。
  通常は2〜3日で改善に向かい、1週間ほどで回復することが多いです。多くは軽くすみますが、生後6カ月未満の乳児は、重症化しやすいです。
  乳幼児の肺炎の約半数、気管支炎の5〜9割はRSウイルスが原因だと見られています。

治療や診断について

RSウイルスに有効な治療薬はなく、必要であれば対症療法薬(咳を抑えたり、炎症を抑える薬)の治療を行います。現在、予防用のワクチンが開発中です。
  鼻汁を使った検査キットが、平成23年10月から1歳未満の乳児に保険適用になり、医療機関で検査後に診断しやすくなりました。
  発症直後に発熱し、熱が下がった後に咳などが続くと要注意となります。
  咳き込んで水や食べ物を嘔吐したり、呼吸が浅くゼーゼーして息を吐きにくくなったりしたら、重症化しているサインですので、熱の有無にかかわらず早めに医療機関を受診してください。
  特に、妊娠36週までに生まれた早産の乳児や心臓疾患を持っている乳幼児などは、RSウイルスに罹ると重症化しやすいです。
  早産児、慢性肺疾患児、先天性心疾患児には、重症化になるのを予防する注射薬「パリビズマブ(商品名シナジス筋注用)抗RSウイルスヒト化モノクローナル抗体」が保険で使えます。

流行期の予防法

感染は主に手や物などを乳幼児が触れたりなめたりして起こります。流行期(10月〜2月頃)は家族全員でこまめに手洗いをして外からウイルスを出来るだけ持ち込まないように注意してください。特に生後6カ月未満の乳児のいる家庭は注意してください。
  また、食器やタオルは共用を避けるようにして、咳をしている場合はマスク着用してください。

国立感染症研究所“感染症情報センター”一サーベランス-一IDWR一感染症の話
参考資料 日本経済新聞 厚生労働省HP