〜薬剤師 今井 孝浩〜

歯はきちんと管理しないと虫歯や歯周病になり、最悪の場合、歯を失ってしまいます。

それだけでなく、歯周病は炎症を起こす物質を生じさせ血糖値の高い状態を引き起こし、糖尿病を悪化させることがわかってきました。

また、歯周病が心臓血管疾患や認知症の発症リスクを高めるとの報告もあり全身の健康の為にも歯の管理が重要になってきています。

「歯周病」

  • 〇細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患。
  • 〇歯と歯肉の境(歯肉溝)に歯垢がたまり歯肉辺縁部が炎症、進行すると歯周ポケットが深くなり歯を支える土台が溶けて歯がグラつき、最終的に歯を失う事に。
  • 〇口の中には300~500種類の細菌が住んでいて、普段はあまり悪い事をしないがブラッシングが不十分だったり砂糖の取りすぎ等で細菌が粘着質の物質を産生、歯の表面にくっ付く。これを歯垢(プラーク)と言い、強くうがいをしても取れない。

(1)プラーク

  • 〇歯垢(プラーク)1mgには10億個の細菌が住むと言われ、虫歯や歯周病を引き起こす。
  • 〇歯垢(プラーク)は取り除かないと硬くなり、歯石となりより強固に付着し、これはブラッシングだけでは取り除けず歯周病を進行させる。

(2)全身に影響を及ぼす歯周病

  1. 狭心症・心筋梗塞・脳梗塞
    歯周病原因菌の刺激や、動脈硬化を誘導する物質を出すと言われている。
  2. 糖尿病
    歯周病は糖尿病の合併症の一つと言われてきたが、歯周病になると糖尿病の症状が悪化すると逆の関係も明らかになり歯周病治療で糖尿病の改善する事も分かってきた。
  3. 妊婦「妊娠性歯肉炎・低体重児、早産」
    妊娠すると歯周病にかかりやすいと言われている。これは女性ホルモンがある特定の歯周病原因菌の増殖を促し、これらのホルモンは、妊娠終期には通常の10~30倍成る事が一因。歯周病菌が血中に入り胎盤を通して胎児に直接感染するのではと言われています。ただし、歯周病は治療可能で、予防も十分可能です。
  4. 誤嚥性肺炎
    食べ物や異物を誤って気管や肺に飲み込み発症する肺炎。誤飲性肺炎の原因菌の多くは歯周病菌と言われているので歯周病のコントロールが誤飲性肺炎の予防に有効。

他に骨粗鬆症、認知症等にも関与しているとも言われています。

(3)歯周病って治るの?

以前は「不治の病」と言われたこともありましたが、今では予防も治療も可能に。歯周病の原因は歯垢ですからためない・増やさないが予防の基本になります。

また、歯垢だけではなく、歯周病を進行させる他の因子として歯ぎしり、くいしばり、かみしめ、合わない義歯・冠、喫煙・ストレス、糖尿病、肥満、薬などもあります。

(4)歯周病チェックリスト(3つで油断禁物、6つ以上で歯周病の疑い)

  • 朝起きたとき、口内がネバネバする。
  • ブラッシング時に出血。
  • 口臭。
  • 歯肉がむずかゆい、痛い。
  • 歯肉が赤くはれている。
  • 硬い物がかみにくい。
  • 歯が長くなったような気がする。
  • 前歯が出っ歯になったり、歯と歯の隙間が出来食べ物が挟まる。

(追記)フッ素

歯の健康を保つ目的でフッ素入り歯磨きや、最近では洗口剤・ジェル、歯科での塗布等あります。追記でフッ素の効果簡単に記載して置きます。

  1. 再石灰化で初期虫歯を治す
    食事をすると、酸によって歯に含まれるカルシウムやリンなどのミネラルが溶けだします。しかし、通常では唾液が働いて、溶けだした成分をもとの状態に戻します。この働きを歯の再石灰化と呼びます。
    こうした歯の再石灰化を助けるのがフッ素なのです。唾液中にフッ素イオンが存在していると、溶けだしたカルシウムがより多くエナメル質に再吸収されます。フッ素は再石灰化を促進し、歯の修復を促すのです。これにより、でき始めの初期虫歯を治療し、健康な歯を保ってくれる。
  2. 歯を強化する
    歯の再石灰化にあたり、フッ素は歯の表面のエナメル質の成分と結びついて、フルオロアパタイトという硬い構造を作りあげます。この働きにより、ミネラルが溶けだしにくく、虫歯になりにくい強い歯にしてくれる。
  3. 虫歯菌の活動を抑制する
    フッ素は虫歯菌の活動を抑制する働きも持っています。フッ素は虫歯菌の出す酸の量を抑えることができるので、酸により歯を溶かされることがなくなり、虫歯を予防することができるのです。

(参考:歯科医師会HP、日本歯周病学会HP、日本臨床歯周病学会等HP、今日の健康)