トップページ > 家庭に潜む危険物 > 家庭に潜む危険物IV(スライム、クレヨン、シャボン玉液) 〜薬剤師 後藤 君代〜 1.スライム ゼリー状で伸びの良い粘土の様なもの。原料は洗濯のり、ホウ砂(またはホウ酸)、水で、家庭でも簡単に作ることが出来ます(当ホームページ:藤沢の科学者参照)。市販品には他に無機リン酸塩が含まれるものもあります。 《症状・応急処置》 ホウ酸の量によって異なりますが、成人の場合はホウ酸の量として1~3gで症状が出てくる可能性があります。症状が出るまでに数時間かかることがあります。吐き気、嘔吐、下痢や激しい腹痛が起こり、皮膚に紅斑が出たり、便が青緑色になることがあります。重症の場合には、けいれんや腎臓の障害を起こします。 無機リン酸塩も同じように、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛などが起こります。重症の場合は電解質のバランス異常から心電図異常、こん睡、けいれんを起こします。 なめた程度なら、水分をとって様子を見てください。飲み込んだ場合は吐かせてください。但し、乳幼児の場合は吐いたものを気管内に吸い込むこともありますので注意してください。1~2度試みて、吐かない場合は無理をさせないでください。 大量に食べたようなら、受診してください。その時はどれくらい食べたかを確認してください。 ・ 参考 ホウ砂1gは水20mlに、ホウ酸1gは水18mlに溶けます。 《予防》 スライムで遊んでいるときは子供から眼を放さないでください。特に乳幼児には遊ばせないようにしてください。 保管する場合は、必ず、子どもが開けられないような蓋をして子どもの手の届かないところに置いてください。 2.クレヨン 美しい色がそろい、小児の興味の対象になりやすく、誤って食べることも多いです。ロウ・顔料でできており、水で拭き取ることのできる水性クレヨンはロウのかわりに界面活性剤を使っています。 《症状・応急処置》 1本程度では、特に症状は認められません。多量に摂ると、吐き気・嘔吐・腹痛・下痢等をおこすこともあります。 気道に入った場合は、窒息等の危険性があります。 多量に飲み込んだ場合は、吐かせてください。但し、スライムと同様に乳幼児の場合は吐いたものを気管内に吸い込むこともありますので注意してください。 気道に入り、窒息が迫っているようなら、背部をたたいて取り除く等の処置を行い、同時に救急車を呼んでください。 受診の際はなめた程度か、どれくらい飲み込んだか、吐き気や下痢等の症状はないか、また咳き込みや呼吸困難などの気道に落ちた様子はないか確認してください。 《予防》 乳幼児の手の届かないところに保管してください。 3.シャボン玉液 市販されているシャボン玉液の主成分は陰・非イオン界面活性剤です。家庭でも身近にある家庭用の洗剤類を薄めて手軽に作れますので、子どもの誤飲事故は多いです。幼児では上手く吹けず、吸い込んでしまうことがありますので注意が必要です。 《症状・応急処置》 界面活性剤の含有量が少ないため、毒性は低いです。誤って飲み込んだ場合、口腔・咽頭の炎症、吐き気、下痢、しゃっくり等があります。中毒量を摂取した場合は、1時間以内に嘔吐が見られます。 飲み込んだ場合は刺激をやわらげるために牛乳や卵白を飲ませてください。多量に飲み込んだ場合は吐かせてください。スライムと同様に乳幼児の場合は吐いたものを気管内に吸い込むこともありますので注意してください。 目に入った場合は流水で15分以上良く洗った後、充血・痛み等の症状があれば受診してください。 受診の際は、市販品か家庭で作ったものか。家庭で作ったものの場合は、使用した洗剤の商品名とどれくらい薄めたのか。また、どれくらい飲み込んだのか、吐き気等の症状はないか、むせ込んではいないかを確認してください。 参考 陰イオン界面活性剤は、消化管から吸収され、数時間後に肝臓で代謝を受けて、ほとんど24時間以内に尿や糞から体外に出ていきます。 〈参考〉日本中毒情報センター