〜薬剤師 後藤 君代〜

1.口紅

母親の真似をして口にし、食べることが多いです。口紅には棒紅、練紅、液体紅があります。口紅は、油性基剤(ヒマシ油、オリーブ油、ラノリン、キャンデリラロウ、カルナバロウ、流動パラフィン、ワセリン、セタノール等を80~95%含有)に、顔料(二酸化チタン、酸化亜鉛)、着色料、香料を適量加えたものです。リップクリームはカンフル0.3~0.6%を含むものがあります(とくに薬用リップクリーム)ので注意が必要です。

《症状・応急処置》
 子どもが誤って食べる位の量ではほとんど問題ありませんが、大量に食べると、油性基剤で吐き気・嘔吐・下痢などをおこすことがあります。
 カンフル含有のリップクリームを大量に食べた場合は口から胃にかけての熱感・吐き気・嘔吐などがおもな症状です。
 症状が現れたら受診してください。

《予防》

  • できるだけ、小さい子どもの前では口紅をつけている様子を見せないようにしてください。好奇心旺盛な時期はまねをしようとして危険です。また、口紅を子どもの手の届くところに置かないように注意してください。

2.化粧水

化粧水のおもな成分はアルコール(エタノール、5~30%含有)と保湿剤(グリセリン・プロピレングリコールなど)で、他に収れん剤、防腐剤、香料などを加えています。
 中毒は主にエタノールによるアルコール中毒です。
 アフターシェーブローションやプレシェーブローションにはアルコールが一般的な化粧水に比べたくさん入っているものもあります。
 アルコールの入っていないものもあります。確認してください。

《症状・応急処置》
 たくさん飲むとお酒に酔った時と同じように、顔が赤くなったり、ふらふらしたり、吐くなどの症状が起こることがあります。小児の場合、低血糖性けいれんをおこすこともあります。昏睡が12時間以上続くと予後不良と言われています。眼に入った場合は痛みや刺激感があります。
 なめたり、一口飲んだ程度なら、水分をとらせて様子を見てください。 吐いたり、顔が赤くなって苦しそうな時は受診してください。眼に入ったときは流水で15分以上洗ってください。その後も痛みや充血が残るようであれば受診してください。受診時には、原因の化粧水を持参してください。

《予防》

  • 子どもの手の届くところに置かないようにしてください。また、容器の口をきつく締めて保管してください。

3.マニキュア液、マニキュア除光液

身近な化粧品類の中では毒性が高く、小児の誤飲事故も多いので注意が必要です。
 マニキュア液のおもな成分はニトロセルロースと溶剤(トルエン、酢酸エチル、アセトン、エタノールなど)です。除光液はアセトン、酢酸エチルが主な成分です。
 子どもの玩具用にはトルエンは含まず、エタノールを含有する水溶性製品が多い。
 中毒の原因は有機溶剤(アセトン、トルエン等)で、玩具用ではアルコールです。

《症状・応急処置》
 アルコールによる症状・応急処置は前項の化粧水を参考にして下さい。
 アセトンの中毒症状は、飲み込むと、のどの痛み、吐き気、嘔吐、頭痛、咳、興奮、消化管出血などを起こします。気管に入ると激しく咳込み、肺炎を起こすこともあります。
 蒸気によって眼やのどに痛みを感じたり、長時間吸入すると飲んだ場合と同様の症状を起こすことがあります。
 皮膚に長時間付けていると乾燥したり、赤くなったり、炎症を起こしたりします。
 眼に入ると、刺激や角膜の炎症が起こることがあります。
 飲み込んだ場合、絶対に吐かせてはいけません、誤嚥性肺炎を起こす危険があります。少量でも飲んだ場合は受診してください。皮膚に付いたときは水と石鹸で2回以上洗ってください。眼に入ったときは、流水で10分以上洗い流してください。 受診の際は原因のマニキュア液または除光液を持参してください。

《予防》

  • 化粧水と同様です。

〈参考〉日本中毒情報センター