トップページ > 家庭に潜む危険物 > 家庭に潜む危険物Ⅶ(食料品等) 〜薬剤師 後藤 君代〜 今回は家庭でよく使われている食料品等についてお話ししたいと思います。普段から使用しているものなので、危険なものという意識がないと思いますが、食べる量や保存の仕方によってはとても危険な食料品もあります。 1.ギンナン ギンナンは昔から薬用・食用にされてきましたが、食べ過ぎると中毒を起こすことがあります。小児が多めに食べて痙攣などを起こす事故が発生しています。 小児で7〜150個、成人で40〜300個で中毒を起こします。 中毒の原因は、「4’-メトキシピリドキシン(4’‐MPN)」で、この物質はビタミンB6(以後VB6)と構造が似ており、VB6の働きを妨げ、数時間のうちにVB6欠乏症となり中毒を起こすと考えられています。 《症状・応急処置》 食べた後、1〜12時間で症状が出ます。ほとんどが90時間(約4日くらい)以内に回復しますが、死亡例も出ています。 症状は主に嘔吐・痙攣で、痙攣は繰り返すことが多いです。ほかに、不整脈・顔面蒼白・呼吸困難・呼吸が速くなる・めまい・意識混濁・下肢の麻痺・嘔吐・便秘・発熱等があります。 家庭での応急処置はありません。吐かせようとすると痙攣を誘発することもありますので、吐かせないで下さい。 症状が出ましたら、受診してください。その際、どれくらいの量のギンナンを食べたのか、症状が出てからどれくらい経っているかを伝えてください。 2. ジャガイモ ジャガイモの芽や光に当たって緑色になった部分には「ソラニン」や「チャコニン」といった天然毒素が多く含まれています。 《症状・応急処置》 「ソラニン」や「チャコニン」を多く含むジャガイモを食べると2〜24時間で下痢・吐き気・嘔吐・腹痛・頭痛・めまいなどの症状が出ることがあります。下痢は数日続くこともありますが、たいていの症状は一過性で終わります。 興奮・幻覚・痙攣・頻脈・徐脈・呼吸困難が現れたら、受診してください。 《予防》 ジャガイモの茎や芽、緑色になった部分は十分取り除いてください。家庭菜園などで作られた小さい未熟なジャガイモは、全体に「ソラニン」や「チャコニン」を多く含んでいることもありますので注意が必要です。 3. 青魚 青魚と呼ばれるサバ・アジ・ブリなどやマグロ・カツオなどの赤身魚には「ヒスチジン」というアミノ酸が多量に含まれています。「ヒスチジン」が多量に含まれる魚に「ヒスタミン生成菌」が付着する(腐敗発酵)と、ヒスチジンが分解され、多量の「ヒスタミン」が魚肉中にたまります。 青魚等を食べて、その成分のタンパク質に対してアレルギー反応をおこすものは食物アレルギーで人によって差があります。先述の「ヒスタミン」が魚肉中にたまって起きるものは食物アレルギーではなく、誰にでも起こりうる反応です。 《症状・応急処置》 食べてから、30分〜数時間くらいで症状がでます。症状は3〜36時間くらいで消失しますが、ほとんどは軽症で12時間くらいで回復します。 主な症状は、顔面紅潮・発疹・吐き気・腹部痛・下痢・頭痛・動悸・めまい・結膜の充血などです。 症状が出たら、受診してください。 どこで何の魚を食べたか、報告してください。 《予防》 「ヒスタミン」は熱に安定なので、加熱しても予防はできません。鮮度の低下したものは食べないようにしてください。 〈参考〉日本中毒情報センター、神奈川県衛生研究所