災害時のビタミンサプリメントの利用につき紹介する。大きな災害においては、食事(栄養・嗜好・身体調節機能<第3次機能>)、休養、運動といった、生活の基本的な部分に支障が起こる。その結果として種々の健康障害が起こるわけであるが、ビタミンの栄養状態についても、各ビタミンで時間的なラグはあるとしても、潜在的欠乏状態を経て最悪の場合には欠乏状態を発症する。そのような状態を防ぐためには、食事からビタミンを含むマクロ・微量栄養素を摂れば解決するが、今年の3月に発生した東日本大震災および原子力発電所損壊のような大きな災害時には、基本的な食事が不十分になり、休養する場である家の喪失によって避難所生活が強いられる。

避難所は体育館等の床に直接布団等を敷いて長期間過ごす事態も余儀なくされ、体の冷え、自分だけの時間が持てない等といった、肉体的、精神的に良くない状態が続く。膝が悪い高齢者等では、立ちあがるのがおっくうになり、横臥の状態で過ごす時間が多くなる。そこで、ビタミンの補給については、排泄されやすい水溶性ビタミン、なかでも高炭水化物食、高脂肪食の増えていくなかで、糖代謝、脂質代謝に関与するビタミンB1、B2、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン等のB群ビタミンの補給がまず求められるだろう。

その場合には、他成分がほとんどの構成成分を占め、ビタミンの吸収が遅く、効率も悪い食品よりビタミンがより良く吸収されるビタミン配合サプリメントあるいは医薬品がおすすめである。難しいのは、当初はすべてのヒトに一律でも良いが、基本は個々人の状態に応じて対応できればより良い。この場合の状態チェックには、尿中ビタミンの検査等が非侵襲的で有効である。

また、放射線による障害を低減するためには、科学的根拠が充分あるわけではないが、おこるであろう酸化的ストレスに対抗するために、抗酸化ビタミンであるビタミンCやEが、役立つかも知れない。今後は、災害時の栄養状態の調査研究データを充実させて、対応策をたてる必要がある。ひいては、このような対応策が個人的な種々の健康問題が起こった場合にも応用できるであろう。

最後に、ビタミン含有保健薬の効能・効果を下記に示す。ビタミン製品摂取の参考になると思われる。「滋養強壮,虚弱体質。次の場合の栄養補給:胃腸障害、栄養障害、産前産後、小児・幼児の発育期、偏食児、食欲不振、肉体疲労、妊娠授乳期、発熱性消耗性疾患、病後の体力低下、病中病後」

末木一夫

(薬学修士、日本ビタミン学会評議委員およびトピックス担当委員。国際栄養食品協会 専務理事および科学委員会委員長、元健康日本21推進フォーラム事務局長、元お茶の水女子大・明治大非常勤講師)