魚が健康維持増進にとって、良い食材であることをご存知のかたは多いであろう。特に、イワシ、カツオ等の青身の魚が、血管の老化を防ぐのに重要な役割を示すオメガ-3多価不飽和脂肪酸(ω-3PUFA)を豊富に含むので、おすすめである。ということから、魚の油をそのまま製品にしたサプリメント、あるいは魚の油から特定のω-3PUFAを抽出してサプリメントとして販売されている。これらの主な生理機能成分は、EPA(イコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)である。医薬品としてもEPAの誘導体が処方薬として処方されて長くなる。前にも紹介しましたが、日本では、世界的に評価の高いJELIS試験がこのEPAの誘導体配合医薬品を使用して行われ、血管系疾病の1次・2次予防にすばらしい効果を示しています。

さて、話を魚、EPAそしてDHAに話題を戻すと、最近国立ガンセンターを中心とする研究グループによって実施されている多目的コホート研究(JPHC Study)によるガンに関連する非常に興味深い報告が世界に向けて発信された。この研究は、日本人の生活習慣とがん・脳卒中・心筋梗塞などの疾病との関係をアンケート調査で解析したものである。対象者は、男女約9万人(45-74歳)におよび平成2年(1990年)から始まっており、今回の結果は、平成7年(1995年)および平成10年(1998年)に調査を開始して平成20年(2008年)に追跡調査した結果に基づいた解析結果を紹介する。

まず、魚、ω-3PUFAが多い魚、EPA、DHA、DPA(ドコサペンタエン酸)の摂取量が最も多いグループは、最もこれらの摂取量が少ないグループに対して肝臓がんの発症リスクが低いことがわかりました。その発症低下率は、36-44%であり、統計学的に有意でありました。また、摂取量が多くなるに伴い肝臓がんの発症リスクが低下傾向を示すこともわかりました。さらに、肝臓がんを発症するリスクが高いB型・C型肝炎ウイルス感染者に限定した調査解析の結果、肝臓がんの場合と同様の結果が得られました。この抑制作用の機序としては、ω-3PUFAの慢性肝炎への抗炎症作用、インスリン抵抗性の改善が関係しているのではないかと推定されています。

西洋社会では、魚の摂取量が日本に比べてかなり低いことから、EPA、DHA、DPAを配合したサプリメントの市場が増大しております。日本においても、かなり魚の摂取量が少ない世代が増えています。魚の摂取と健康について目を離せない状況です。

末木一夫

(薬学修士、日本ビタミン学会評議委員およびトピックス担当委員。国際栄養食品協会 専務理事および科学委員会委員長、元健康日本21推進フォーラム事務局長、元お茶の水女子大・明治大非常勤講師)