2012年9月28日に、高脂血症治療薬のオメガ-3脂肪酸エチル(商品名ロトリガ粒状カプセル2g)が製造承認を取得した。適応は「高脂血症」で、1日1回(1回2g)を食直後に服用する。

高脂血症の治療では、同系統の薬として、EPA製剤のイコサペント酸エチル(商品名エパデール など)などが使用されており、高純度の魚油から精製された日本で開発された薬剤である。

今回、承認されたロトリガは、イコサペント酸エチル(EPA-E)とドコサヘキサエン酸エチル(DHA-E)を含む、複数の成分から構成されたオメガ-3脂肪酸エチルで ある。

上記したように、魚油に多く含まれるω-3多価不飽和脂肪酸(オメガ3 PUFA)であるイコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)の期待される生理作用として、高脂血症の治療薬として市場化された、また、これまで、オメガ3 PUFA(EPAおよびDHA)サプリメントの動脈硬化発症予防、二次予防あるいは糖尿病発症予防等の生活習慣病に関する生理作用の話題について紹介をしてきた。

今回は、神経系に関する話題として、うつ病、抑うつ症との関係について紹介する。20世紀になってうつ病の発症率が急上昇しており、その要因のひとつとして、食生活の変化があるのではないかと言われている。

こうしたなかで、食事からのEPAおよびDHAの摂取量の低下がうつ病に関連するという研究報告がある。これまでの疫学調査報告から、少なくとも週に2〜3回の魚介類の摂取によって、気分障害へのリスクを低減することが示唆されている。

今回の紹介研究は、食の嗜好性と抑うつの関連について調査した結果である。日本人の男女大学生約100名を対象に3日間の食事摂取調査を実施し、抑うつの評価法として、主観的な評価法であるSDS(Self-rating Depression Scale)を用いて解析した。その結果、オメガ3 PUFAを多く含む食品を摂取しない人は、摂取する人に比べて抑うつ的な症状が有意に高いことがわかった。

毎年実施されている、国民健康栄養調査の結果によると、生鮮食品の摂取状況について、10年前の平成13年と比べると、平成23年の野菜類、果物類、魚介類の摂取量は減少し、肉類の摂取量は増加。年齢階級別では、20〜40歳代の野菜類、果物類、魚介類の摂取量が少ない。前記した研究は平均年齢約20才の青年を対象にした調査で、“うつ病”あるいは“抑うつ神経症”の発症率増加との環境的要因としての食事の嗜好による影響が考えられる。オメガ3 PUFAを豊富に含む青身の魚摂取の低下を補うために、魚油を配合した、食品、サプリメントあるいは医薬品の摂取・服用がうつ病発症予防あるいは進行抑性、症状改善に役立つ可能性があると思われる。

末木一夫

(薬学修士、日本ビタミン学会評議委員およびトピックス担当委員。国際栄養食品協会 専務理事および科学委員会委員長、元健康日本21推進フォーラム事務局長、元お茶の水女子大・明治大非常勤講師)