〜薬剤師~金子 昌弘 大島 崇弘〜

塗布薬編

塗り薬をもらって使用するとき、どの位塗ればいいのだろうかと思ったことはないでしょうか?ステロイドでは使うのが怖くてつい少量にしてしまったり、逆に早く治るのではと大量に使用したりしたことありませんか?お薬を有効に使用していただくためには適切に使用することが大切です。今回はステロイドを中心に塗り薬(塗布薬)の使い方を紹介したいと思います。

塗り方の基本
 ステロイドは適量を使用しなくてはいけません。塗布薬の使用量の目安としてよく使われるのが、フィンガーチップユニット(fingertip unit:FTU)という単位があります。1FTUは成人の指を含めた手のひら2つ分の面積に適量塗るための必要量で、0.25g~0.5g程度の量になります。ローション剤では1円玉大に出した量が1FTUに相当します。
 塗布薬を使用するは細菌汚染を避けるために手を洗ってから使用します。特にプラスチック製の軟膏容器から取り出す際には注意してください。取り出した薬は基本的には指などで患部に薄く伸ばして塗ります。塗布後には再び手を洗い、手に残った薬を完全に取り除くようにします。
複数の薬を塗布するときの注意
 複数の薬を別の場所にそれぞれ使用する場合には、使用毎に手を洗うことが必要です。もし種類ごとに洗えない場合には、前に使用した薬が指に残ることを考慮して、弱いステロイドから使用します。強いステロイドが患部以外の場所に付着しないようにするためです。
 同じ場所に複数のお薬を使用する場合、医師からの指示がない場合には先に塗布する範囲の広い薬から使用します。その後に使用範囲の狭い薬を塗布します。
ステロイド軟膏には強さのランクがあります
 ステロイドには5つのランクがあります。1群:最強→2群:とても強い→3群:強い→4群:弱め→5群:弱い
 炎症が起きている程度や部位、患者さんの年齢を考えて適切なランクの薬を使用します。使用する場所によりお薬の吸収される割合が異なります。例えば前腕を1.0とした場合、足首は0.42、足底は0.14と吸収されにくく、額は6.0、あごは13.0と吸収率が高まります。乳幼児やお年寄りの方や顔には弱めのものなどを使用します。
ステロイド軟膏の副作用
 ステロイドと聞くと副作用が心配と思われたことはないでしょうか。ステロイドは優れた効果とともに副作用も併せもつ薬です。しかしステロイドの使用の歴史は長く副作用も十分に知られているので、むしろ安全に使用できる薬剤とも言えます。
 塗布薬は皮膚患部に直接作用するため、通常の使用量であれば血液中に入る量は極めて少量です。
 塗布薬としての副作用は「薬を塗ったところの毛が生える」「皮膚が赤くなる」「皮膚が少し薄くなる」また「にきびの悪化」「かぶれ」「薬を塗ったところにもともとあった感染症(水虫など)の悪化」などがありますが軽度のものです。
医師から処方された薬は指示された場所にとどめて
 同じような湿疹だから同じ薬でいいだろうと思われたことはありませんか?湿疹は同じように見えても原因が異なることがあり、使用するお薬も異なります。特にステロイドの場合には同じ湿疹でも場所が異なると、違うランクの薬を使用することがあります。お薬の選択を誤ると予想外の副作用を生じることがあります。このため医師の指示がないのに、いろいろなところに使用しないようにしてください。
薬の使用方法がわからないときは薬剤師に確認を
 一般用医薬品もさまざまなランクのステロイドが販売されているため注意が必要です。例えば乳幼児の皮膚は薬の吸収率が高いため、同じ場所、同じ症状でもランクを下げて使用することがあります。大人が購入した薬を乳幼児に使用する場合には注意してください。
 安全に薬を使用していただくために、薬の使用方法て不明なことがありましたら薬剤師に確認して適切に使用するようにしましょう。

参考資料ステロイド軟膏のお話:シオノギ製薬
調剤指針:日本薬剤師会編
マルホ株式会社ホームページ