〜薬剤師~金子 昌弘 大島 崇弘〜

点眼薬編

花粉症やドライアイから白内障、緑内障まで点眼薬は様々な年代の方に使用される薬です。特にこの時期では花粉症の薬を使用し始めた方も多いのではないでしょうか。
 目薬なんて眼に垂らして終わり!と思われるでしょうが、意外にも誤った使い方をしていることがあります。
 今まであまり気にしていなかった方、正しく使用している方、改めてご確認していただければと思います。

点眼薬とは
 医薬品の溶液、懸濁液または医薬品を用時溶解もしくは懸濁して用いるもので、結膜嚢に適用する無菌に製した製剤です。
点眼液の分類
 水性点眼剤
  医薬品を精製水に溶解した水性点眼液、稠度の高い粘性点眼液、医薬品を精製水に懸濁した
  水性懸濁点眼液などがあります。
 非水性点眼液
  溶剤は注射用非水性用剤(植物油)を用いて、医薬品を溶解させたり懸濁させたもの。
 眼軟膏
  ワセリンなどを用いて結膜嚢に適用する無菌に製した軟膏。
眼の仕組みと目薬の流れ
涙の流れ
 涙は絶えず涙腺から出て、眼の表面を潤したり埃などを洗い流したりしています。そして涙はまばたきによって目頭の方に集まって、涙点(るいてん)、鼻涙管(びるいかん)を通ってのどの方に流れていきます。
目薬の流れ
 目薬を使用すると眼の表面にある涙と混ざり合います。このため目薬は涙と一緒にのどの方に流れていきます。
 また、まぶたの下は結膜嚢という袋状になっています。
 目薬はその部分にたまって徐々に眼の奥に浸透していきます。
 ただし結膜嚢はとても小さく1滴の目薬が入りきらないことがあり、目薬があふれてしまうことがあります。
点眼剤の使用上のポイント

点眼方法

1.点眼前には石鹸などで十分に手を洗ってください。

2.点眼液の容器の先端が眼瞼やまつ毛に触れないように点眼します。容器の先端が眼に触れると涙液が逆流して点眼容器内が汚染される可能性があります。また眼球を傷つける危険もあります。

3.目薬が涙点から流れ出ていかないように、しばらく眼を閉じるようにします。また緑内障治療薬のβ遮断薬を使用時には点眼後は眼を閉じて涙嚢部(目頭)を圧迫します。(涙嚢部を押さえることで鼻粘膜からの吸収による全身性の副作用の発現が減少できます)。あふれた点眼液はきれいなティッシュなどでふき取ります。

4.点眼後に眼をパチパチしないようにしてください。目薬が眼全体にいきわたるイメージがありますが、涙と一緒に目頭の方に集まって、涙点からのどに流れ出してしまいます。

 寝る前の点眼を行う場合には遅くとも寝る5~10分前までには使用してください。就寝中は涙の流れが停滞するため、薬によっては眼への刺激を増強することがあります。

点眼量は
 点眼液1滴は20~50μLですが結膜嚢の最大容量は20~30μLです。
 多く点眼しても液は眼球外に流れ出てしまいます。多く垂らしたからよく効く訳ではありません。医師の指示がなければ1滴で十分ですよ。
点眼間隔
 2種類以上の点眼薬を使用する場合には、5分以上の間隔をあけることが望ましいです。
点眼順序
 2種以上の点眼薬を使用する場合の点眼順序は、多くの場合5分以上間隔をおけば問題ないですが懸濁液が含まれる場合は、懸濁粒子が結膜表面で溶解して持続効果がでるので後に使用します。
 はじめに使用すると懸濁粒子を洗い流してしまいます。油性点眼液や眼軟膏は水性点眼液をはじいてしまうので最後に使用します。緑内障の薬やドライアイの薬を複数使用する場合には治療効果を高めるため使用方法や点眼間隔が指示されていることがあります。
 医師・薬剤師の指示を守って使用してください。
保存方法
 冷暗所保存の指示がある場合には冷蔵庫で保管します。記載のないものは基本的には冷蔵庫で保管してかまいませんが、一部の点眼液では冷蔵庫で保管してしまうと結晶が析出してしまうものもあります。薬を保管する袋に室温で保管と記載していないか確認してください。
 薬の中には光に不安定なものがあります。薬を入れてある袋は遮光処理してあるものがありますので使い終わった薬は袋に戻すようにしましょう。
点眼はどうも苦手でうまく眼に入らない場合
げんこつ法
 上手にさせない時は、利き手で薬の容器を持ち、反対側の手でげんこつを作って、げんこつを台にして使用する方法があります。 容器が固定されるため命中率が高まり、容器の先が眼に触れることも防げます。
点眼補助用具の使用
 特別な器具を使用すると容器が眼の中央に固定することができて、容器の先が眼に触れないように使用することができます。
【商品例:ニューらくらく点眼(川本産業)】
使用前には必ず薬の確認を
 液体が入っている小瓶は点眼薬というイメージが強いため、液体の下剤や湿疹、水虫治療に使用する薬を点眼してしまうなど思わぬ事故の報告があります。
 他のことに気をとられてしまって、と言うことがないように十分注意してください。
薬の使用方法がわからないときは薬剤師に確認を
 安全に効果的に薬を使用していただくために、薬の使用方法で不明なことや上手に点眼できない場合なども気軽に薬剤師に相談してください。

参考文献参天製薬ホームページ
調剤指針:日本薬剤師会編