〜薬剤師~金子 昌弘 大島 崇弘〜

貼付剤編

貼付剤をもらって使用するとき、つい貼りっぱなしにしていないでしょうか?貼る時間が長い方が効くようでと思ったことはないでしょうか?特に暑い時期にはかぶれを注意しなくてはいけません。また紫外線量が多いときには注意する必要がある薬剤もあります。お薬を有効に安全に使用していただくためには適切に使用することが大切です。今回は消炎鎮痛を目的とした貼付剤を紹介したいと思います。

貼付剤とは
 布、またはプラスチック製のフィルムなどに、有効成分を含ませた基材や添加物などを延ばし、または封入して皮膚表面の患部や皮膚を通して患部へ有効成分を到達させる局所作用型の外用剤です。皮膚からの浸潤・拡散により組織内に有効成分が移行して直接効果が期待できる利点があります。貼付剤は消炎鎮痛薬が主体ですが、抗生物質やステロイド剤などの製品もあります。
 なお、喘息や気管支炎などのときに使用する薬や狭心症の治療薬、女性ホルモンを補充する薬、禁煙補助薬の中に貼って使用するものがあります。これらは経皮吸収型製剤に分類されます。
パップ剤とプラスター剤があります
パップ剤
 不織布などに膏体を比較的厚く塗布したもので、水分含量が多く、その水分蒸発により患部の熱を奪い、持続的な冷却効果が得られます。(温感タイプを除く)厚みがあり、皮膚に緩やかに貼り付きます。
プラスター剤
 ポリプロピレン製フィルムや布などを支持体に有効成分と粘着剤の混合物を塗布したもので、水分を含んでいないため冷却効果はないですが、薄く粘着性に優れています。
冷感タイプと温感タイプがあります
 冷感タイプには、有効成分として冷感刺激作用のあるl-メントール、dl-カンフル、ハッカ油が含まれています。温感タイプではトウガラシエキスやノニル酸ワニリルアミド(カプサイシン誘導体)などの温感刺激作用のある成分が含まれています。
 温感刺激成分を含むものは刺激が強く出ることがありますので、入浴する場合は30分以上前にはがして、入浴後もしばらくしてから使用するようにしてください。
パップ剤の使い分けは?
 打撲や捻挫では患部に熱感・腫脹(腫れ)が伴うことが多く、患部を冷却することが望ましく、冷却効果のあるパップ剤が効果的です。炎症の急性期に温感タイプを使用すると、熱感をさらに悪化させ痛みが強くなることがあります。パップ剤はプラスター剤に比べると厚めで、体などの広くて凹凸や動きの少ない場所に適しています。関節など動きの多い場所に使用するときは切れ込みを入れて貼るとはがれにくくなります。プラスター剤は軽くて薄いので伸縮性と粘着性に優れているため、膝や肘などの関節周囲に使用してもはがれにくいのが特徴です。
かぶれを予防するために
 貼付剤は長時間貼っていればそれだけ効くわけではありません。有効成分を患部に移動させて効果が出ますが、一定の時間で基材に含まれる有効成分がなくなります。長時間の使用は十分な薬剤が得られず、皮膚をふやかすためにかぶれの原因につながります。はがした後にすぐ貼らないで1~2時間は皮膚を休ませて使用することでかぶれを予防します。特に夏季などの使用で、はがした後は汗を拭き取ることも有効です。また少しずらして使用することも効果的です。かぶれやすい方は、就寝中の使用は十分注意することが必要です。
 はがすときは、できるだけゆっくりはがしてください。はがす際に痛みがある場合は、水やぬるま湯で湿らすとはがしやすくなります。毛が生えている方向にそって巻き込むようにはがすようにしてください。たまに痛いからといって一気にはがすことはないでしょうか?皮膚表面を傷つける原因になるので避けてください。
光線過敏症の注意がある薬剤があります
 ケトプロフェン外用剤(消炎鎮痛剤)などを使用する場合は、光線過敏症を注意しなくてはなりません。光線過敏症の初期症状は、発疹・発赤やそう痒感です。腫脹や浮腫、水泡、びらんなど悪化する場合がありますので、異常があらわれた場合は使用を中止して医師に相談するようにしてください。
 ケトプロフェンによる光線過敏症は、UVA(紫外線A波:皮膚を黒くする紫外線)により引き起こされると考えられています。そのためもっとも有効な安全対策は、貼付剤を使用した患部を紫外線にさらさないようにします。衣服、帽子、手袋などで紫外線を避けますが、これらの使用が困難な場合は、サンスクリーン剤(日焼け止めクリームなど)も有効です。市販されているサンスクリーン剤には、UVB(紫外線B波:皮膚を赤くする紫外線)を守るSPFの表示と、UVAを守るPA+、++、+++が表示されています。光線過敏症はUVAによって発症すると考えられているため、PA+++を使用すると効果的です。ただし一部のサンスクリーン剤にはオキシベンゾンおよびオクトクリレンという成分を含有するものがあります。オキシベンゾンおよびオクトクリレンはケトプロフェンと交叉感作性*注 がありますので、ケトプロフェン使用時には避けるようにしてください。ケトプロフェン使用後4週間は同様に注意してください。

注:交叉感作性とはアレルギーの原因物質と、それと類似した化学構造を持った物質が含まれる薬を併用することで、両者でアレルギー反応が発症し増強される作用

薬の使用方法がわからないときは薬剤師に確認を
 貼付剤は使用する場所や症状により、使用する薬剤が異なります。また光線過敏症対策が必要な薬剤もあります。以前処方された薬や、購入した薬の残りを使用することは注意が必要です。場合によっては医師に確認しなくてはいけません。
 安全に薬を使用していただくために、薬の使用方法て不明なことがありましたらまず薬剤師に確認して適切に使用するようにしましょう。

参考文献 SDIC Q&A版 No.102:スズケン医療情報室編