〜薬剤師 青木 敏朗〜

春になり行楽の季節になりました。外に出ることが多く、服装も薄着になると思います。

今回は虫による刺症や咬症、いわゆる「虫さされ」についてのお話です。

特に春から夏にかけて、比較的多い事例や、重篤な症状を起こす主な虫の症状と対処法についてご説明したいと思います。

1.蚊、アブ、ノミ

血液を吸う虫です。吸血をする虫ですが、皮膚を咬まれた際、唾液中に含まれる成分で刺激を受けて痒みをともない赤く腫れます。

多くの場合、局所的な症状ですが、その虫にアレルギーがあると全身的な症状になります。

ごくまれに死に至る例もあります。

2.蜂

蜂毒といいますが、主な成分として痛みを起こすアミン類、神経毒を起こすタンパク、溶血作用や組織を破壊する作用のある酵素の3種類があります。

これらが痛みや腫れの原因になりますが、通常は局所症状のみで2~3日で症状は消失します。蜂などに刺された場合は、針が皮膚に残っている場合は直ちに取り除いてください。

冷やすことも効果があります。

問題は、蜂毒に起因するアナフィラキシーショックで、毎年20~30名が亡くなっていることです。

アナフィラキシーショックとはIgE抗体を介するI型アレルギー、いわゆる即時型反応で、一度蜂に刺されて、その後再度刺された場合に、蜂毒の成分がアレルゲンとなっておきるショック症状です。数分~数十分で呼吸困難、血圧低下、心停止などの致死的状態になります。

蜂毒によるアナフィラキシーショックには、エピネフリン自己注射キット(エピペン)が有効であり、リスクがある人はあらかじめ医師の診察を受け携帯することが出来ます。

エピネフリン自己注射キット(エピペン)は、徴候や症状を感じた時に速やかに注射すると,ショック症状を軽減させる効果があります。

エピペンは下記の指定された医療機関で処方してもらうことが可能です。

  ○アナフィラキシー対策フォーラム

http://www.anaphylaxis.jp/index_flash.html

  ○エピペン専用ダイヤル(発売元:マイラン製薬)
 フリーコール:0120-933-911
 (受付時間:月曜日~金曜日
  09:00~17:00)※祝日・当社規定の休日を除く

http://www.banyu.co.jp/content/corporate/merckmanual/index.html

3.毛虫

毛虫のなかでも、毛やトゲに毒を持っているものは一部です。その中でチャドクガやドクガの幼虫(毛虫)の毒針毛があり、直接触れたり、また衣服に付着した毒針毛に触れても湿疹がでます。

多くの方が、気が付かずに刺されていることが多いです刺されてから2~3時間で、広範囲に湿疹が広がります。全身に広がった場合は、抗アレルギー薬やステロイドの内服が効果的です。速やかに医療機関を受診してください。

4.ダニ

ヒョウヒダニはアレルゲンとしても知られています、またダニ自体の咬症は局所的な症状で、重症にならないことが多いです。

ダニの中では、ツツガムシが媒介するツツガムシリケッチアの感染によりおこるツツガムシ病は、死亡例もある感染症です。

ツツガムシに刺されると10日位で1cmほどの潰瘍が出来た後(潰瘍は認められないこともあります)、発疹や発熱などの全身症状を発症します。

治療薬としてはテトラサイクリン系の抗生物質が有効です。医療機関にて早期に治療すれば重篤な症状にはならないので、早期の発見と治療が大事です。

一般的な対処法

虫さされは、咬まれたり、刺されたときに、唾液や毒が入って痒みや痛みが出ます。またその際に虫を介した病原菌による感染症が起きる可能性があります。そのため虫さされを、予防することと、刺された後の対処が重要です。

虫さされに対する予防法としては、物理的に保護をする(皮膚を露出しない)ことです、虫除けスプレーなども有効です。

ただ虫除けスプレーは蚊などには有効ですが、蜂や毛虫などには効果がありません。

虫にさされた際に針が皮膚に残っている場合は、決して擦らないで直ちに取り除いてください。

針を取り除く際は、蜂などの場合はピンセットや毛抜きを使用します。毛虫などの場合で、針が刺さっている場合は、ガムテープを貼ってそっと剥がすのが良いようです。

その後、傷口を洗浄して抗生物質の入った抗ヒスタミン薬やステロイドの軟膏を塗ります。冷やすことも効果があります。

局所的な症状であれば一般用医薬品の軟膏で対処できます。また痒みが広範囲の場合は、抗ヒスタミン薬の内服薬を服用します。いずれも薬局で購入できます。

一般用医薬品でアンモニア水含有の外用液が、虫さされの薬として販売されていますが、現在ではあまり効果がないと言われています。

一般用医薬品を使用して治療しても症状が全身的に広がる場合は、感染症やアレルギーの可能性がありますので、速やかに医療機関を受診してください。