トップページ > 病気のトピックス > インフルエンザ編 > 病気のトピックス~インフルエンザを予防しましょう 〜薬剤師 青木 敏朗〜 インフルエンザ感染のしくみを理解する インフルエンザの流行する季節になりました。インフルエンザがどのようにして感染をしていくかを知り、感染をしないように対策をしましょう。 インフルエンザウイルスの分類 インフルエンザウイルスの分類は、大きく分けて、A、B、Cの3つの型があります。 A型インフルエンザウイルスは、ヒトや鳥、豚などの動物が感染します。B型とC型のインフルエンザウイルスは、一般にヒトだけが感染します。 A型インフルエンザウイルスの「亜型」は、ウイルスの表面にある突起のうち、ヘマグルチニン(H型、16種)とノイラミニダーゼ(N型、9種)の形の組み合わせで分類されます。 現在ヒトの間で流行しているのは、A型インフルエンザウイルスのH1N1とH3N2です。 *「インフルエンザウイルスの型と分類」については、 当ホームページの「病気のトピックス」>「新型インフルエンザとワクチンについて」>「インフルエンザウイルスの型と症状」にて、ご参照ください。 インフルエンザウイルスとは何か? インフルエンザの原因となるインフルエンザウイルスは、細菌と異なり細胞体ではありません。 生命体に寄生して増殖する寄生生命体で、生物の細胞の中のみ増殖をすることが出来ます。 インフルエンザウイルスは、もともとは「かも」や「アヒル」などの水禽類(カモ科鳥類)を自然宿主としています。自然宿主とは、ウイルスなどの病原体を体内で保有していても無症状である生物のことを言います。 鳥インフルエンザウイルスと人のインフルエンザウイルスとは同じインフルエンザウイルスの分類になりますが、構造は違います。 鳥インフルエンザの原因ウイルスが、遺伝子の変異によって、人から人へと効率よく感染する能力を獲得した場合、人の間で急速かつ大規模な流行を引き起こすおそれがあります。このようなウイルスにより引き起こされるヒトの感染症が、新型インフルエンザとして懸念されております。 なお、鶏肉や鶏卵を食べることによってヒトに感染したという事例の報告はありません。 新型インフルエンザに関しては、WHOをはじめとして国際的に協力をしながら、まん延防止等の対応措置をしています。 「パンデミック(N1H1) 2009」についてわかったこと 2009年4月にメキシコで感染が始まったN1H1型インフルエンザウイルスは、のちに「パンデミック2009」と命名され、インフルエンザウイルスは同年5月に日本でも感染が報告され、その後、夏から秋にかけて単発的に流行して、10月頃より大流行して1月末には終息いたしました。 他の国と比べると、メキシコやアメリカでは千~1万人の死亡者があり、被害が大きかったことに対して、日本では多くの患者さんが感染したのにもかかわらず、1年間の死亡者は、約200名と少なく、各国と比較して死亡率は非常に低かったといえます。 これは、インフルエンザ迅速診断キットや抗インフルエンザ薬が医療機関で普及していたことが理由と考えられます。 迅速診断キットとは、鼻やのどの粘膜から検体を採取してインフルエンザウイルスの可否を判定するもので、インフルエンザの確定診断に使用します。ここ数年で、より早く、より確実に判定できるようになりました。 また2010年には新たに抗インフルエンザ薬も発売されました。 点滴静注のペラミビル(製品名:ラピアクタ) 吸入薬のラニナビル(製品名:イナビル) 患者さんの重症度や状態に合わせて選択肢が広がりました。 インフルエンザは予防することが一番ですが、インフルエンザに罹ってしまったと思ったら、医療機関を受診して治療を受けましょう。インフルエンザが疑われる場合には必要に応じてインフルエンザの検査を行いますが、発熱した直後は、インフルエンザの確定診断が出来ない場合もあります。 何故、日本では冬に流行するのか? インフルエンザが冬に流行する原因としては、下記のことが考えられています。 インフルエンザウイルスは低温度・低湿度で長時間活性(感染力を持った状態)を保ち易い。 冬の乾燥した空気がのどの粘膜の防御機能を低下させ感染し易くなる、さらに低気温で免疫力が衰える。 冬は比較的、限られた空間に人が集まりやすい。年末年始をはじめとして帰省をはじめとする人の移動が多い。 インフルエンザの感染様式の種類 インフルエンザウイルスは、生物の細胞の中でのみ増殖をします。 インフルエンザウイルスは感染者からのくしゃみ、咳によって気道分泌物の飛沫に含まれて周囲に飛散して、その飛沫物により感染します。 飛沫物また、空気感染をする飛沫核も次第に非活性化(死滅)していくわけですが、その感染の違いを理解していただき感染しないよう予防をしましょう。 感染の種類としては、「接触感染」、「飛沫感染」、「飛沫核感染」に分けられます。 *参考: 厚生労働省の「目で見て分かる新型インフルエンザ」 「接触感染」 接触感染とはインフルエンザウイルスを含む飛沫物の付着した物に触れる手等を介して感染することです。 咳による飛沫物の飛散する範囲は2m以内といわれております。 飛沫物は金属やプラスチックといった無機物でも数時間活性を保ち、実際に公衆電話の受話器、ドアノブ、テーブルなどでインフルエンザウイルスが確認されています。 これはウイルス全体にいえますが、エタノールなどのアルコールにて感染性がなくなりますので、汚染された所を、アルコール製剤を使用して消毒するとよいです。 もちろん他の人に感染させないようにするという意味で、感染者の手洗いも大事です。 「飛沫感染」 飛沫感染とはインフルエンザウイルスを含む飛沫物を喉や鼻から吸い込んで感染することです。 インフルエンザウイルス粒子の大きさは、直径 0.08-0.1ミクロンで、不織布製マスクを容易に通過する大きさなのですが、飛沫物の大きさは(5ミクロン以上なので不織布製マスクでも予防効果があります。 マスクの着用とうがいは、乾燥によるのどの防御機能低下を予防するためにも有効なので、外出時にはマスクをしたり、帰宅後はうがいをしましょう。 また室内では加湿によりインフルエンザウイルスの寿命が短くなるという報告もあります。喉の乾燥を防ぐためにも加湿器は有効です。 「飛沫核感染(空気感染)」 飛沫核というのは、飛沫が小さくなると空気中の水分が蒸発して乾燥縮小した飛沫核となり長時間浮遊するもので、そのウイルスを吸入することによって起こる感染を飛沫核感染(空気感染)と言います。 結核菌は飛沫核感染(空気感染)が主たる感染経路ですが、インフルエンザ感染の場合は、特別な状況下で飛沫核感染が起きると言われおり、ほとんどが接触感染または飛沫感染です。 特別な状況下とは感染者の飛沫物の中に大量のインフルエンザウイルスが含まれていたり、室内などの限られた空間で、かつ温度・湿度とも低いような条件で起こったのではないかと考えられており、実験では飛沫核の状態のインフルエンザウイルスが、低温度・湿度の状態では長時間活性(感染できる状態)を示し、湿度50%以上で死滅(不活性化)しやすくなることが報告されています。 インフルエンザに罹った場合、ご家族が感染しないように予防するためには、患者さんの部屋の加湿をすることや、定期的に換気をすることが有効です。 感染者は発症してからどのくらい気をつけるのか? インフルエンザウイルスに感染した場合、潜伏期間(病原体に感染してから、体に症状が出るまでの期間)は1日から3日と言われています。 発熱している期間は当然ですが、解熱後もウイルスを排出しています。感染した場合、他の人に感染させる期間は、発症する数時間前から始まり、熱が下がった後も数日間は感染させる可能性があります。 学校保険法では、解熱後2日間経過するまでは学校に行ってはいけないことになっていますので、一つの目安にして良いと思います。 最近は感染者の咳エチケットも普及してきました。さらにお願いしたいのは、発症して医療機関や人ごみに行くとき、また熱が下がっても数日は他の人に感染させる可能性がありますので、マスクを着用しましょう。 インフルエンザの日常予防をする インフルエンザを予防しましょう。 インフルエンザシーズン前にワクチン接種を受けることが、予防の基礎です。 うがいや手洗いをしましょう。 バランスのよい食事と、十分な休養をとり、疲労を避けましょう。 室内の湿度を50~60%に保ちましょう。 人込みや繁華街への外出を控えましょう。もし外出するときにはマスクを着用すると良いでしょう。 インフルエンザに罹ってしまったら 水分(お茶、ジュース、スープなど)を十分に補給しましょう。 安静にし、十分な休養を。学校や職場は休みましょう。 早めに医療機関を受診して治療を受けましょう。 周りの方へうつさないために、マスクをつけましょう(咳エチケット)。外出を控えましょう。 薬を使う時には、医師や薬剤師の指示に従い正しく使用してください。症状を安定させるために、抗インフルエンザ薬は副作用が出現しないかぎり使い切ることが大切です。また薬剤への耐性化を防ぐために、症状が改善した後も途中で中止しないようにしてください。薬を使用していて何か異常だなと感じるような場合は、早めに医師・薬剤師などにご相談ください。 参考文献:厚生労働省「インフルエンザの基礎知識」より