トップページ > OTCトピックス > OTCトピックス:アレルギー性鼻炎治療薬~一般用医薬品点鼻薬について~ 2010.12.7 〜薬剤師 青木 敏朗〜 1.一般用医薬品の主な鼻炎用点鼻薬について まもなく、4~5人に1人と言われるスギ花粉症の方にはつらいシーズンに入ります。 市販されている花粉症の予防アイテムや治療薬は、たくさんありますが、今回は12月初旬にスイッチOTC化されて発売される、一般用医薬品の鼻炎用点鼻薬についてお話いたします。 *スイッチOTC化(薬):医師の判断でしか使用できなかった医薬品を、薬局で買えるようにした一般用医薬品 鼻炎用点鼻薬は、急性鼻炎やアレルギー性鼻炎の鼻づまり・鼻みず・くしゃみなどの症状の緩和を目的に使用されるもので、通常はスプレー式で鼻腔内に噴霧する薬剤です。 12月に発売されるものは、 1.医師が処方する薬剤でも使用されているステロイド(12月初旬発売予定) 2.血管収縮薬の単剤(発売予定)の点鼻薬になります。 *(参照:図1) 点鼻薬の主成分はアドレナリン作動薬(血管収縮薬)、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、ステロイド薬などがあります。 販売名 リスク分類 成 分 分 類 ①<季節アレルギー専用> ナザールARコンタック鼻炎スプレー 新発売 第一類 ベクロメタゾンプロピオン酸エステル ステロイド薬 ②ナシビンMスプレー 発売予定 第一類 オキシメタゾリン塩酸塩 血管収縮薬 ③コールタイジン点鼻液 第二類 プレドニゾロン塩酸テトラヒドロゾリン ステロイド血管収縮薬 ④ザジテンAL点鼻スプレー パブロン点鼻Z 第二類 ケトチフェンフマル酸塩 抗アレルギー薬 ⑤ナザールブロック エージーノーズクール 第二類 クロモグリク酸ナトリウムクロルフェニラミンマレイン酸塩ナファゾリン塩酸塩 抗アレルギー薬抗ヒスタミン薬血管収縮薬 ⑥パブロン点鼻S 第二類 クロルフェニラミンマレイン酸塩塩酸テトラヒドロゾリンベンゼトニウム塩化物 抗ヒスタミン薬血管収縮薬抗菌作用 ⑦ナザール「スプレー」 クールワン鼻スプレー 第二類 マレイン酸クロルフェニラミン塩酸ナファゾリンベンゼトニウム塩化物 抗ヒスタミン薬血管収縮薬抗菌作用薬 ※図1(主な鼻炎用点鼻薬:一般用医薬品) 2.主な鼻炎用点鼻薬成分の作用と注意 アドレナリン作動薬(血管収縮薬) 鼻粘膜の血管を収縮させることにより、充血や腫れを和らげます。 即効性がありますが、続けて使うと効果が低下します。 抗ヒスタミン薬 鼻みずやくしゃみに関与するヒスタミンという化学物質の作用を抑える成分です。 抗アレルギー薬 第二世代の抗ヒスタミン薬とも言われており、抗ヒスタミン作用と抗アレルギー作用(アレルギー反応に関与する化学伝達物質の遊離を抑える)を併せ持った成分です。 続けて使用することで、アレルギー症状の抑制効果も期待できます。 ステロイド薬 炎症性物質の産生を抑えるなど、強力な抗炎症作用のある成分です。 鼻粘膜は吸収が良いので決められた回数以上使うと全身への影響が現れることがあるので注意が必要です。 抗菌作用薬 うがい薬などにも含まれる成分で、ある程度の抗菌作用があります。 3.血管収縮薬の配合点鼻薬について スギ花粉のシーズンは、地域により変わりますが1~4月と長期にわたります。 血管収縮薬の配合されている点鼻薬(表の③・⑤・⑥)は、鼻づまりには即効性がありますが、血管収縮薬の点鼻薬を長期に使用したり、過度に使用すると、効果が減弱して逆に鼻づまりがひどくなることがあります。 さらに血管収縮薬は、長期連用により鼻粘膜の肥厚(中の粘膜が厚くなり鼻腔が狭くなってしまう)が起こると手術が必要になる場合もあります。ので、1ヶ月以上の連用や1日に5~6回も使うというような過度の使用は絶対に避けるようにしてください。 ただし、今日は花粉の飛散量が多い日は鼻づまりがひどくて眠れないという方は、②のような血管収縮薬単剤の点鼻薬を単回(寝る前など)に一時的に使用することは有効です。 4.抗アレルギー薬単剤点鼻薬について それまでの点鼻薬は血管収縮薬配合されており、安心してお勧めできる一般薬がありませんでした。 2007年秋に抗アレルギー薬単剤の点鼻薬がスイッチOTC化されました。 ④番の抗アレルギー薬単剤の点鼻薬は、鼻づまりにも有効です。またアレルギー症状の抑制効果もあり症状が治まっている時も1日4回しっかりと使用することが大切です。 5.ステロイド単剤点鼻薬について 花粉症のシーズンでも、花粉の飛散量は天候などで左右されます。 飛散量の多いときは、抗アレルギー薬単剤の点鼻薬では弱いところがありました。 ①番のステロイド点鼻薬は、医師が処方する薬剤でも良く使われている成分で、ステロイド点鼻薬の成分(ベクロメタゾンプロピオン酸エステル)は、ステロイドの中でも局所的な抗炎症作用が高く全身的な影響は少ないと言われております。 ステロイドの抗炎症作用は、強いので症状がつらい時には適している薬剤です。 ただし、1年間に1カ月間を超えて使用しないようにしてください。 もし1カ月間を超えて使用するような症状であれば、医療機関を受診してください。 具体的な使用法は、ひどくなったら①のステロイド点鼻薬、もし夜鼻づまりがひどくて寝れない場合は、②の血管収縮薬を単回に使用しても良いでしょう。 症状の軽い間は④番の抗アレルギー薬ということになります。 ①のステロイド点鼻薬と④番の抗アレルギー薬は、指示どおりの使用回数使いますが、使用に際しては鼻をかみ、鼻腔のとおりを良くしておくことが大切です。朝に点鼻する場合は鼻腔の乾いている朝1番(起きたらすぐ)に使用すると効果的です。 以上簡単に、一般用医薬品の鼻炎用点鼻薬についてお話いたしました。 軽い花粉症の鼻炎の症状は今回紹介しました点鼻薬を正しく使うことである程度対処できるようになりましたが、毎年スギ花粉症に悩まれている方は、飛散前の初期治療(飛散予想の2週間前からの抗アレルギー薬の服用と1週間前からのステロイド点鼻薬の併用)が症状の発現予防や軽減に有効です。 早めに医療機関を受診するようにしてください。 参考:SAFE‐DI:一般用医薬品 主な鼻炎薬