〜薬剤師 今井 孝浩〜

◎ビタミン

ビタミンは生体の基本的な生理機能(アミノ酸代謝・核酸代謝・タンパク質の合成・エネルギー産生・活性酸素調整など)を維持するために不可欠な物質です。ビタミンの必要量は微量ですが、体内で生合成できないか、できても十分でなく、食事など、体外からの摂取のみにより補給され、仕事やスポーツなどによる疲れやストレス、喫煙、偏った食事、病中病後、アルコール過多、妊娠・授乳期で不足しやすく、欠乏すると様々な症状を示します。

極度の疲労の蓄積による倦怠感、だるさ、肩や首のこり、手足のしびれなどの改善目的でビタミンB1製剤・アミノ酸製剤・ビタミンB12製剤を、また、肌荒れやシミ・そばかすの改善目的でビタミンC製剤が用いられたりします。

ビタミンには、水溶性ビタミン(9種類)と脂溶性ビタミン(4種類)に大別され、いずれのビタミンも欠乏症が知られています。水溶性ビタミンの多くは補酵素として働くため、糖質・タンパク質・脂質などの代謝に必須の栄養素です。また、ビタミンEやCはフリーラジカルの消去を担う抗酸化作用も有しています。

主な作用、欠乏症、過剰症につきまして、下記の表にまとめましたので参照ください。気合い事項につきましては、厚労省他なるべく新しい資料を参照し選択いたしました。

水溶性ビタミン

  関連した作用 欠乏症 過剰症
ビタミンB1 神経・精神機能維持
脂質・糖・アミノ酸代謝
Wernicke脳症、神経炎、
心拡大、脚気、乳酸アシドーシス
 
ビタミンB2 粘膜・神経機能維持
脂質・糖・アミノ酸代謝、成長促進
口角炎、脂漏性皮膚炎、眼膜炎、舌炎
創傷治癒(ちゆ)遅延、成長不良、口唇炎
 
ビタミンB6 ヘモグロビン合成
アミノ酸代謝
貧血、皮膚炎、末梢(まっしょう)神経炎
口角炎、舌炎
末梢神経障害
ビタミンB12 造血・神経機能維持、脂肪代謝
タンパク合成、骨髄における細胞分化
悪性貧血、巨赤芽球性貧血、
末梢神経障害
 
ビタミンC 造血機能維持
膠原(こうげん)繊維・細胞間組織形成
貧血、壊血病、骨形成不全、
創傷治癒(ちゆ)遅延、成長不良
尿路結石
ナイアシン 末梢血管拡張、代謝促進 認知症、皮膚炎、食思不振、ペラグラ  
パントテン酸 脂肪・タンパク質・糖代謝 皮膚炎、末梢神経障害(灼熱〈しゃくねつ〉足症)  
ビオチン 脂質・糖代謝、アミノ酸代謝 脱毛、知覚異常、皮膚炎  
葉酸 造血機能維持、アミノ酸代謝 巨赤芽球性貧血、神経障害、
腸機能不全
発熱、じんましん、紅斑、かゆみ、呼吸障害

脂溶性ビタミン

  関連した作用 欠乏症 過剰症
ビタミンA 視覚、生理機能維持、成長作用、
生殖作用、上皮組織機能維持、細胞の増殖・分化
夜盲症、眼球乾燥、
角膜軟化、皮膚炎
生殖機能低下、味覚異常
頭蓋内圧亢進(こうしん)、脱毛、関節痛、皮膚落屑、筋肉痛
ビタミンD Ca-Pの調節、骨石灰化 骨・歯発育障害、
くる病、骨軟化症
尿路結石、腎機能障害、軟組織の石灰化障害、
高カルシウム血症
ビタミンE 発育促進・細胞増殖機能維持
生体膜の抗酸化
溶血性貧血、過酸化脂質増加
深部感覚障害、小脳失調
起こりにくい
ビタミンK 血液凝固能維持、骨形成 出血傾向、新生児メレナ
突発性乳児ビタミンK欠乏症
溶血性核黄疸(おうだん)〈未熟児〉※

※現在は販売されていないビタミンK3製剤による報告。ビタミンK1やK2では過剰症は報告されていない。