「大根おろしに医者いらず」という言葉があるくらい、大根は様々な面から体にいい食材とされています。古代エジプト時代にも記録が残っているほど古くから食べられてきた野菜です。世界各地に様々な品種があり、日本でも古くから各地で特徴のある品種が作り出されてきました。現在、青果用の品種としては主に青首ダイコンが栽培されています。

春の七草のひとつでもあり、古くは「すずしろ」と呼ばれ、「大根(おおね)」とも呼ばれていました。

大根の根には消化酵素であるジアスターゼが豊富に含まれ、消化を促進し、胸やけや胃酸過多、胃もたれ、二日酔いなどに効果的です。タンパク質分解酵素や脂肪分解酵素、さらには発がん物質を抑制する酵素をも含んでいます。これらの酵素は、熱に弱いので、生のまま大根おろしやサラダなどとして摂取することをオススメします。また、ビタミンCも多く、皮により豊富に含まれています。さらに、皮にはビタミンP(ヘスペリジン)が含まれ、毛細血管を強くし、ビタミンCの働きを助け、吸収力を高めます。さらに、リグニンと呼ばれる食物繊維が豊富に含まれており、腸内の老廃物を洗い流してくれる効果があります。また、辛味成分であるアリル化合物には消炎・殺菌・消化促進の働きがあり、風邪にも非常に効果的です。葉の部分は、緑黄色野菜の仲間で、カロチン、ビタミンC、カルシウムなどが豊富に含まれています。根よりも栄養豊富なので、ぜひ捨てずに食べてみてください。

このように大根には様々な効果があることがわかっていただけたと思います。そこで、症状別に大根の民間療法を説明します。

  • 淡の切れないとき、喉の痛み
    大根おろしに水あめを加えたものを、少量水で薄めて飲む。
  • 便秘
    大根おろしを汁ごと食べる。
  • 筋肉の痛み
    大根おろしを手ぬぐいなどに塗り、患部に貼り付ける。
  • もちや団子がのどにつかえたとき
    大根のしぼり汁を少しあたためてから飲み込む。

このほかにも、5株分ほどの大根の葉を干したもの(干葉)を水でよく煮て浴槽に入れた干葉湯につかると、体がよく温まり、腰痛や冷え性に効果があると言われています。

これまでは大根の根と葉についての話をしてきましたが、実は大根の種は中医学では薬用として使用されているのです。種子はライフクシ(萊菔子)と呼ばれ、赤褐色でやや扁平な形をしています。

☆萊菔子
基原:ダイコン Raphanus sativus L.の成熟種子
出典:日華子諸家本草
性味:辛、甘/平
帰経:脾、胃、肺
効能:消食化痰、降気化痰

種子の薬用が初めて記載されたのは、日華子諸家本草です。本草綱目には、根・葉・種子に関する記載がみられ、痰気喘息、風痰、風寒に対し使用されていました。様々な部位が薬用にされてきましたが、現在の中華人民共和国薬典には、種子のみが萊菔子として収載され、消化不良、腹痛、下痢、咳、痰が多い時などに利用されています。

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※これらの『おくすり相談事例』は薬剤師・鍼灸師の福島勇二先生が湘南朝日に連載したコラム『漢方の相談室』より転載したダイジェスト版です。