【質 問】1年くらい前から腹部全体が張り、時に痛みを覚えるようになりました。最近は食欲もなく、手足だけがやせてきたような気がします。食事をするとさらに腹部が張って苦しく、げっぷをしても楽になりません。今年で57歳になる男性ですが、1年前から会社の部署が変わりました。市販の腹部膨満感の薬ではまったく効かず、病院に行くと軽い胃炎を起こしていると胃酸の分泌を抑える薬を出されました。少しは効いているような気がします。
【答 え】

彼は会社の部署は変わりはしたものの、特に大きなストレスはない。ただし何となくおもしろくない職場であるという不満がある。いわゆる団塊の世代に多い悩みであろうか。舌の表面は真っ白で、小便は遠い方だという。顔色は黄色みがかった青白さである。

この病症は、慢性的ストレスにより肝と脾が失調して気が滞り、腹部に水分が停滞したために起きている。肝の気を伸びやかにし、脾のめぐりを改善する「柴胡疎肝散・さいこそかんさん」(せんじ薬)と、脾胃の働きを改善し腹部に停滞した水分をさばく「平胃散・へいいさん」(顆粒)を併用していただいた。

2週間後には腹部膨満感と舌の白苔は消失し、顔色も元気になった。ここで定年を迎えるかという悲哀感がなくなり、やりがいすら感じるようになったという。

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※これらの『おくすり相談事例』は薬剤師・鍼灸師の福島勇二先生が湘南朝日に連載したコラム『漢方の相談室』より転載したダイジェスト版です。